”知らなきゃ損する”医師のためのキャリア・転職の用語集

  • google+
トップ > よく聞くが調べてことはないキャリアの基本的な用語

よく聞くが調べたことはないキャリアの基本的な用語

自己理解

自己理解とは文字通り自分を理解することです。説明するのは簡単ですが、“本当に”自分を理解するというのは大変困難なことです。なぜなら自分を見つめる視点には多くの盲点やゆがみが隠されており、ジョハリの窓にあるように、『自分が分かっている自己というのは限られており、自分では分かりえない盲点の自己や未知の自己というものがあるから』です。しかしながら正確にすべての自己を知る必要はありません。我々はすでに仕事ついているついていないにかかわらずキャリアをすでに歩んでいるからです。なぜそのキャリア(まさしくキャリアの語源ですね)を選んだか、それを歩んでどうだったかを内省することで自己理解は深まります。

ではなぜそのような自己理解をしないといけないか?

それは現実的に皆さま自身がキャリアを選択しないといけないからです。選択するためには自分の軸を持っていないといけません。それは自分の内面(能力、価値観、特性)を理解することから始まります。

一般の大学生は就職活動をする際、まずこの“自己理解、自己分析”を行います。自分のことが分かっていないとどの業界、業種を選んでいいのかが分からず就職活動を適切に進めることが出来ません。どの学部であっても業種、業界は広範囲になるのでこのような作業が重要になるのです。では医学生や医師は職業が決まっているから自己理解をする必要はないのか?そんなことはありません。医師といえどもその職種(=科目)というのは多岐にわたります。心臓外科になる先生と精神科になる先生はやはりその特性や価値観というものが概ね変わってきます。またどういった病院で働くのがあっているのか、どのような働き方が自分に合っているのか?これは診療科選択や研修病院の選択で悩む医学生だけではなく、一人前の医師になってからも当てはまります。一般に自己を理解する3要素としては、興味関心、価値観、能力・行動特性・可能性などが重要であるようです。一つの分野に興味があったとしてもそれをやり通る能力や可能性がないとそれは自己理解ができているとは言えません。適切なキャリア選択にはまずは適切な自己理解というものが必要なのです。

キャリア自律

キャリア自律とは自分自身で当事者意識をもって、自己責任でキャリアを開発していく仕組みです(働く居場所の作り方 花田光世/日本経済新聞出版社より)。医学生や研修医についてはこの“自律”ということを強く意識してもらう必要が出てきています。つまり自らのキャリアプラン(=ロードマップ)を作りそれに合わせたキャリアを選択するということが必要となっています。しかしながら自分がやりたいと思っても、そこに職業的なニーズがないとそもそも医師として活躍することは無理です。医師になり医師として活躍するのは、患者や医療機関のニーズに合わせて考える必要があるのです。その際必要な視点としては、内的キャリアと外的キャリアをある程度合わす(同期させる)ということが重要です。内的キャリアとは自分にとっての働く意味や価値などです。一方外的キャリアとは具体的な職種、職位、資格などです。医師になられる方は皆優秀ですが、この内的キャリアが確立されていない方もいらっしゃいます。つまり医師という外的キャリアを得るのが第一目的で医師になった場合、医師になって働くことの意義、病気を治し患者さんに感謝される幸せ、医師という職業を選択した自らの意思などが低いと自分が「どんな医師になりたいか」が分からず迷ってしまうのです。もちろん医学部に入るには中学校、高等学校から十分な受験対策をしなければならず、内的キャリアをあまり意識せず勉強に励まれて医師になられる方も多いと思います。それでも医学部に入学したからには医師になってからどうするのかというキャリアビジョン(それほど明確なものではなくても構わない)とともに、医師として働くことの意義や価値というものは十分模索していただき、医師になってから十分にご活躍していただきたいと思います。

弊社では転職・アルバイト探しだけではなく、先生方のキャリア支援を実際にさせていただく医師キャリというサイトを用意し、医師の方の様々なキャリアの相談に応じております。

アセスメント

自分はどのような仕事に向いているのか?どのような指向を持っているのか?それを客観的かつ科学的方法による測定を行うことで、性格、適性、スキル、分野別能力などを測ることが出来るものです。主にキャリアコンサルタントとのカウンセリング場面で使用することが多いです。その結果により相談者も自分のことを改めて理解し、コンサルタントも相談者をよりよく知ることで、よりよいカウンセリングが行えることになります。一般的には主に高校や大学の進路指導の際に使われることが多く、それは職業適性を測るもの(適職診断検査、職業興味検査など)となっていますが、弊社では医師および医療従事者に限っての転職・キャリア支援を行っているため、性格検査(MBTI)とキャリア・アンカーチェックというものを医師・医学生には奨励しています。キャリア・アンカーチェックはこれまで医学生・若手医師を中心に50人以上、MBTIも10人以上の医師に実施させていただいております。医師になる、なったはいいが自分が何に向いているかが分からないという方はどちらかのアセスメントを受けられることをお勧めいたします。

ワークライフバランス

キャリア概論の中でワークキャリア、ライフキャリアということでキャリアの定義による違いをお伝えいたしましたが、政府広報オンラインの「ワークライフバランス」の定義によれば“働くすべての方々が「仕事(=ワーク)と育児や介護、趣味や学習、休養、地域活動といった仕事以外の生活(=ライフ)との調和をとり、その両方を充実させる働き方、生き方のこと”と定義しています。バランスというとその最適な状態が5:5ということで考えられがちですが、厳密な意味で半分半分ということはありません。男性、女性ということでいうと特に女性の場合出産や子育てが発生し、その際に仕事を制限するなどライフの部分を重視しなければなりませんが、通常の勤務だとそれが厳しくなりますので産休や育休を取り仕事は休む、また子育て期間については時短勤務をし、ライフを重視させる。これは男性も同様、出産や子育て、その他のライフイベントにおいて仕事量などを調節しその時々に仕事と生活の調和を図ることで一人一人がワークもライフも充実させるという意味合いがあります。

ここで注意しないといけないのは、生活を重視すること=仕事の質や量を必ずしも減らすということにはならないことです。生活を重視するばかりであればいつまでたっても立派な一人前の医師になることはできません。ハードな生活であったとしても自分が一人前の医師になるための研鑽はしないといけないですし、そのためには若い頃を中心に働くことを重視することも必要です。ワークライフバランス(=WLB)は悪い意味でとらえると楽な勤務とはき違えられることがあります。医師の求人サイトにおいても“週4日 当直なし 高学年棒”などの誘い文句があふれていたりします。もちろんライフを重視する時期においてはそのような働き方も十分にあり得ますが、専門医を取るタイミング、さらなる研鑽をする時期などはそのような謳い文句に安易に乗らないことが大切です。

ワークライフインテグレーション

ワークライフバランスの考えを一歩進め、ワークとライフを統合するという考え方です。ワークライフバランス(WLB)の考え方ではワークとライフは全くの別物であり、ワークというのを会社から与えられる仕事、定義された仕事という解釈になります。これまで高度成長期を含めて、サラリーマンにとっては給与を得るために会社から与えられた仕事をきちんとやることがワークの定義でした。しかしながら高度な情報化社会になり、一瞬でビジネスの潮目が変わる現代においては、指示された仕事をそのままやっているだけでは生き残れなくなり、企業も個人も柔軟な発想で時代のニーズに合った仕事を日々模索していかなければならくなりました。つまり雇用される側であっても、今やっている仕事の質、目的というのは日々変化しており、会社という枠組みで働くにしてもより能動的に仕事に工夫を加え、時代のニーズをとらえながら自らの力を発揮するようなビジネスパーソンとなることを求められているのです。また男女平等の考え方や仕事に対する多様な考え方が導入された結果、一つの会社においても色々な就業形態の社員が生まれることになりました。週5日の正社員のほか、パート、アルバイト社員、派遣社員、時短勤務といった勤務形態が生まれ、その他在宅勤務の導入や副業の奨励をする企業も出てきています。そんな中ワークとライフは完全に切り離されたものではなく、高次の次元で統合し双方の充実を求める考え方がワークライフインテグレーションなのです。例えば、ワークにおいてはこれまで自分の趣味としていたものが自分の仕事になるといった例もありますし、これまでは会社で仕事をしなければならなかったものが、家で仕事をできるようになってくる。こういった場面においてはワークとライフを対立軸でとらえることが出来ません。

医師の方においてはそもそも働き方が必ずしも固定ではなく常勤の勤務以外に多くの先生がアルバイトをされています。また臨床をしながら研究をされ論文を書いておられる方もいらっしゃいますし、ベテランになった先生は趣味やプライベートを充実させるという意向の方もいらっしゃいます。医師が一人前になるまでのロードマップはある程度確立されていますが、その後のワークとライフについては先生ご自身の価値観ややりたいこと、やるべきことを総合的に考え統合していく必要があるのです。

キャリアコンピテンシー

キャリアコンピテンシーとは、どのような状況にあっても自分のキャリアを構築し続けることのできる力のことを言います。コンピテンシーは単なる指先のスキルや頭の良さといった誰にでも分かりやすい能力に限らずまだ自分で理解できていない潜在能力ややる気、行動力などを含めた何かをやり遂げる能力を指します。例えば内科医師であれば患者を診断できる能力だけではそれは一つのスキルにしかならず、そのスキルを発揮できる行動や動機、人間性までをも含みます。なぜスキルではなくコンピテンシーという言葉が生まれたのか?それは医師に限らず広く一般的に働くということが情報化社会、サービス産業の拡大により多くのコミュニケーションを必要とするに至ったからです。専門性が高い仕事だから誰とも会話をしなくていいというようなものはありません。また変化が激しい時代には一つの能力だけを持っていればいいということではなく、様々な能力、人間力を駆使して問題解決をしないといけなくなりました。そのため企業の面接においても人間力やコンピテンシーを図るために個々人に対して様々な角度から質問を投げかけることになったのです。

エンプロイアビリティ

エンプロイアビリティとは簡単にいうと「雇用される能力」ということになります。医師の場合、基本的には医師不足であり、求人>>>求職者 という関係性になります。そのため一般のビジネスパーソンに比べてこのエンプロイアビリティというのは低くても許される環境にはなっています。とはいえ私が転職・アルバイト支援をする中で正直このエンプロイアビリティをもう少し理解し実践された方がいいという方をお見受けすることがあります。いくら医師が足りていないからといって病院もどんな医師でもOKということにはなりません。患者さんのウケが悪い、看護師からクレームがくる、病院の経営理念を全然理解していない、こういった医師はすぐではないにせよどこかで(他に入職医師が決まった時点など)辞めていただくという決断を病院側がする場合もあります。またそこまでいかないにせよ、雇われている医師側も病院によい印象を与えた方が給与条件なども交渉しやすいですし、何よりお互い気持ちよく働けます。そういった意味においては医師にも基本的なエンプロイアビリティは大切です。キャリアの教科書 (佐々木直彦/PHP研究所)によると、エンプロイアビリティの基本になるのは次の4つの能力であり、1.専門能力、2.自己表現力、3.情報力、4.適応力ということです。まず医師の方では専門性がなければなにも始まらないので1は当たり前のことで、2や3も自己研鑽をある程度していれば身につくものですが問題は4です。医師の場合専門性を高め専門医などを取る過程の中で1~3は自然に身に着くことが多いですが、適応力というのが一番難しく病院にとっても医師を採用する際に一番重視する点です。特に大学医局を辞め民間病院に移る場合などは注意が必要です。今までは医局からの派遣で先生としても病院としても一つの枠を埋めるような感じでのマッチングだったのが、採用する病院側としては1人の重要な戦力として来ていただくことになります。そこには人間性を含めた適応力というのが大きな採用の基準として存在し、またその職場に適応できなかった医師は前述したとおり辞めていただくということにもなりかねません。もちろん病院のスタンスにすべて合わせる必要はありませんが、雇われている先生の価値観、ビジョンと病院の経営理念や行動指針などが違ったとしてもそのギャップを埋める努力や理解をし、お互いに前を向けるような姿勢が大切になるのです。労働市場は常に変化しており、また診療科や地域においてもその求人ニーズは違ってきます。医師一人ひとりが価値を認められ、雇用主からも評価を受ける上で基本的なエンプロイアビリティは必要です。

目次

ページのトップへ戻る